"Loop up Sendai"

「るーぷあっぷ・せんだい」

るーぷる仙台でめぐる毛糸の旅

TANABATA.org 2004「再生」展への出展プラン
2004/6/1作成のプラン

2004/8/4-8(一部7/7-)
サンモール一番町、いろは・文化横丁
東北大学片平キャンパス、東北工業大学一番町ロビー
せんだいメディアテーク、野中神社ギャラリー
Sendai, Japan


制作意図
色とりどりの毛糸を見上げる位置に配置することで、伝統的な七夕の儀式を現代アートとして「再生」させるとともに、それを仙台の名所旧跡を結ぶ「るーぷる仙台」の路線上に配置することで、文字通り仙台の街を「結ぶ」(ループ・アップ)ものとしたい。

展示方法・搬出/搬入
その場にあるものに毛糸を結ぶ(実際の展示プラン詳細は後ページ図入り資料参照)。 搬入は展示場所の都合に合わせ、8/1より順次行う。サンモール商店街アーケード柱は、七夕飾り展示後に飾りの配置を見て展示を行う。 搬出は8/9より行う。

 

わかりやすい図入り資料
シナリオ版「るーぷあっぷ・せんだい」
"Loop up Sendai"
 〜るーぷる仙台でめぐる毛糸の旅〜

2004年の夏休み、東北三大まつりのひとつ「仙台七夕」におもしろい現代アートの展示があると聞いて、仲よしふたり組、うさのすけくんとゲコ山くんは、杜の都仙台に出かけてみることにしました。

うさのすけ:「仙台七夕」って、毎年200万人くらいの人出があるらしいよ。
ゲコ山  :へぇ、すごいね。となりのウシガエルくんのお母さんだって毎年2万人しか子ども産まないから、100年もかかっちゃう!

そうこうするうちに、ふたりはとうとう仙台駅に到着。新幹線を降りて2階ペデストリアンデッキへ。

ゲコ:で、会場へはどうやって行くの?
うさ:仙台の街はアーケードがずうっとつづいてるから、そこに沿って行けばいいんだけど、今日は市内の主な観光スポットを結んで走る「るーぷる仙台」っていうバスに乗ろうと思うんだ。20分おきに運行しているから、とっても便利なんだよ(運行路はこちら)。仙台駅はバスプールから発着してる。
ゲコ:バスプール? 水着持ってくればよかったなぁ。
うさ:ちがうって。あれだよ。バスもちょうど着いたみたいだ。
ゲコ:わぁ、レトロでいい感じのバスだねぇ。

ふたり、バスに乗ろうとして、バス停上に毛糸が結ばれているのに気づく。

ゲコ:ねぇねぇ、もしかして、これって「アート」?
うさ:かもね。毛糸みたいだけど、青のグラデーションだから、川か何かみたいですずしげだね。
ゲコ:もしかして、七夕にちなんで、「天の川」を表現してるんじゃないかな!
うさ:ゲコ山くんはロマンチストだなぁ。さぁ乗ろう。料金は後払いなんだ。一日乗車券は600円で乗り放題だよ。

ゲコ:うわ、中にも毛糸じゃん!

見るとバスの天井にも毛糸がはられている。

うさ:これが天の川なら、天井の丸いライトはさだめし、月だね。
ゲコ:ほほぉ。うさのすけくんも、かなりの詩人だね。

バスは仙台駅を出発、青葉通り一番町へ。

ゲコ:あ、今、アーケードの七夕かざりがちらっと見えた。しっかし、聞きしにまさる人出だね。
うさ:そうなんだよ。まるで満員電車状態になるんだ。でもその中でも、例年、比較的人出のすくないアーケードがあるんだ。
ゲコ:へぇ。どうしたんだろうね。
うさ:アーケードが途中でTの字に分かれるもんだから、人の流れが一方へかたよってしまうんだね。で、そこへ人の流れをつくろう、というのがこのアート展のねらいでもあるんだ。

ゲコ:と、いうことは、そこが会場なんだね?
うさ:その通り。ここだよ。さ、降りよう。
ゲコ:え、もう着いたの。

ふたり、青葉通り一番町で下車。

ゲコ:各バス亭に毛糸が結んであるんだね。
うさ:ホントだ。バス亭の屋根は、どこか武家屋敷みたいだね。

ふたり、サンモール商店街へと向かう。

ゲコ:わぁ、七夕飾りが豪快だなー。さすが伊達政宗のおひざもとだね。
うさ:おひざもとと言えば、ゲコ山くん、「ピザ」って、10回言ってみて。
ゲコ:ピザ、ピザ、ピザ…
うさ:(ひじを指さして)ここは?
ゲコ:エルボー。うさのすけくん、ちょっと古いよ。若い人にはわかんないって。あ、 よく見ると、七夕飾り以外にもいろいろ展示されてるね。
うさ:そうなんだよ。去年からはじまったこのTANABATAオルグなんだけど、去年は「観光とアート」、今年は「再生」をテーマに行われているんだ。
ゲコ:「観光とアート」? なんかイマイチそのつながりがわかんないんだけど。
うさ:要するに、仙台七夕や仙台がもつ観光資源とアートとが出会う、ということだと思うんだ。プランナーである宮城教育大学村上タカシ先生(「オタク」で有名な村上隆とはタカシちがい)は、去年までこの近辺に住んでいて、そのよさを実感したんだそうだよ。そして今乗って来た「るーぷる仙台」でめぐることのできるアート展という壮大な計画を考えているんだって。その手始めがこのサンモール商店街周辺で、今年はそのアーケードの延長線上にある東北大学片平キャンパスまで会場が拡張されたんだ。
ゲコ:あ! また毛糸。
うさ:ホントだ。

ふたり、いろいろなところに「天の川」のように結ばれた毛糸を見つけて歩く。

ゲコ:あ、あそこにも! 夏に毛糸って、暑苦しいかと思ったけど、七夕飾り自体がいろんな色だし、これくらい離れてながめると、毛糸というよりは単なる糸に見えるね。
うさ:そうだね。もともと「たなばた」って、漢字では「棚機」とか「織女」とも書くんだけど、中国からきた7月7日に行われる「乞巧奠」っていう、例の牽牛星・織女星にまつわる儀式と、日本古来からあったお盆に先立つみそぎの行事が結びついたもので、江戸時代に描かれた酒井抱一の「七夕図」なんかにも、この針仕事の上達を願う供物として、五色の糸が描かれていたりするんだ。つまり、色とりどりの毛糸がこうして上の方にかけられているっていうのは、伝統的な七夕の儀式の「再生」でもあるってことだよね。
ゲコ:なるほどぉ。奥が深いね。
うさ:そういえば、このあたりに野中神社っていう、縁結びと商売繁盛の神社があるんだ。行ってみよう!
ゲコ:うわ、やっぱりここにも毛糸だ。
うさ:何か書いてあるぞ。なになに…「毛糸を結んでください」だって。
ゲコ:縁結びの神社だし、何とも似つかわしいね。

ふたり、境内に毛糸を結んでから、アーケードを片平キャンパス方面へと進む。

うさ:ここが東北工業大学一番町ロビーだよ。
ゲコ:ずいぶんいろんな大学が関係しているプロジェクトなんだねぇ。
うさ:そうだよ。このほかにも東北生活文化大学東北学院大学の方も参加しているんだ。
ゲコ:まさに学都仙台だね。そう言えば仙台って、むかしは「日本のハイデルベルグ」とか呼ばれてたんだよ。
うさ:へぇ〜。知らなかった。ゲコ山くん、ものしり〜。で、このロビーでは、今回出展している作家のみなさんの作品ファイルが見られるんだ。
ゲコ:そりゃ便利だね。それはそうと、順路はここからずっとまっすぐだね。
うさ:そうだけど、なんでわかるの?
ゲコ:だってほら、通りの並木に毛糸が結んであるじゃない。これが道しるべになってる。
うさ:本当だ。まっすぐ行ったつきあたり、ほら、あそこが東北大学片平キャンパスだよ。中庭では、宮教の高山登先生の枕木の作品が見られるはずさ。
ゲコ:そういや「枕木」って、英語ではsleeper、つまり「寝るもの」っていう言い方するって知ってた?うさ:へぇ〜。ゲコ山くん、いよいよ物知りだねぇ。
ゲコ:それを「枕木」って訳すなんて、実に言いえて妙だよね。うさ:なぁるほど。さぁ着いたよ。

ゲコ:うわぁ。広いし落ち着いていて、緑あふれる素敵なところだね。この歴史ある建造物が何ともいいね!
うさ:そうなんだ。これらの昭和初期を中心に立てられた建物は、一時解体されるという動きもあったんだけど、市民運動などの成果もあって、結局保存されることになったんだよ。かつて魯迅が学んだ「階段教室」っていうのも保存されてる。
ゲコ:夏だから「怪談教室」、なんつって!!
うさ:…特に以前「標本館」として使われていたこの建物、これは今回きれいにリニューアル、つまり「再生」されたんだ。たとえば外壁は、当時使われていたタイルを再現して、いたんでいるところにはめこむ、という方法で修復されたんだよ。新築するよりもずっとずっと費用がかかったらしい。
ゲコ:それでも、「再生」させることを選んだってわけだね。で、またここにもやっぱり性懲りもなく毛糸が結んであるんだけど、これもやっぱり「再生」と関係してるのかな。
うさ:どうなんだろうね。何かこの毛糸は、目に見えない関係性のようなものを示唆しているようにも思えるけど、ちょっと深読みしすぎかな。ちなみにこの建物のコーナーにあたっている部分には、学長室があるらしい。
ゲコ:へぇ。そんなエライ人の部屋の前に毛糸なんかはっちゃっていいの?
うさ:だからおもしろいんじゃないか…いやいやちがうちがう。窓から見える毛糸が風にゆれるさまは絶景だよ。ニュートンが木から落ちるリンゴにヒントを得て自然科学の分野に大変革をもたらしたように、毛糸も何かをひらめかせてくれるかもしれない。

 

 

ゲコ:うわ、この毛糸、道路をはさんで隣の建物にまでつづいてるよ。
うさ:そうそう、この隣の建物っていうのが、「多元研」といって、伝統ある異分野の研究所、つまり素材工学研究所、科学計測研究所、反応化学研究所を融合させて3年前に発足したものなんだ。有機、無機、生体、及びその組み合わせなどの多様な物質に関する多元的(Multidisciplinary)な研究を組織的・戦略的に展開し、「多元物質科学」という新しい学術領域を開拓すると共に、成果の発信、社会還元、人材育成を通じて、持続型社会の構築という人類・社会の命題解決に貢献することを目標としているらしよ。
ゲコ:…つまりマルチなんだね!

ふたり、多元研の建物で囲まれた中庭へいたる。

ゲコ:ちょっとこれ、すごい量の毛糸なんだけど。
うさ:ホントだね。よくもまぁこれだけの毛糸を結んだものだね。
ゲコ:でもこのさんさんと差し込む太陽光に照らされて、毛糸がすっごくキレイだね。
うさ:時折吹く風にゆれる様子も幻想的だし。
ゲコ:あ、お弁当広げて食べてる人もいる。
うさ:のどかだなぁ…

 

 

うさ:じゃあ、中庭を抜けて、来たのとは別の「正門」から出よう。
ゲコ:え、こっちが「正門」? さっきの方が正門らしかったけど。
うさ:確かにあっちは守衛所もあってそれらしいんだけど、正確には「北門」なんだ。
ゲコ:いろんな人が入ってくるね、ここ。正門前にも、やっぱり毛糸だ。

うさ:ここから歩いて3分くらいで、霊屋橋に着くんだ。
ゲコ:あ、もう見えてきた。あれだね。どうしてそんなへんてこな名前なの?
うさ:たぶん、この橋をわたった向こうに、伊達政宗のお墓である「瑞宝殿」があるからだと思う。もちろん、この橋がかかっているのは♪広瀬川〜流れる岸辺〜の青葉城恋歌で有名な広瀬川だよ。
ゲコ:うわ、やっぱりここにもあると思ったけど、これはこれまでとはちょっとかわった毛糸のはり方してるね。
うさ:どうやら、霊屋橋を「もうひとつ」掛けたらしいね。 ゲコ:なるほど「再生」ってわけだ。
うさ:しかしこうして見ていると、まるで虹だね。
ゲコ:ちょっとクサい言い方すると、「虹の掛け橋」だね。

ふたり、しばらくその「新しい橋」をながめてから、瑞宝殿前のバス停まで来る。

うさ:あ、ちょうど「るーぷる」が来た。
ゲコ:ホントだ。今度は緑色だね。
うさ:全部で3種類運行してるんだよ。赤、緑、黄。
ゲコ:まるで信号だね。ふたり、バスに乗車する。ゲコ:あ、ここにも毛糸だ。
うさ:この橋は評定河原橋。七夕前夜祭のとき、花火を見にたくさんの人出があるらしいよ。
ゲコ:川面にうつる花火を見るためだね。
うさ:きっと毛糸も花火でうつくしく浮かび上がったことだろうね。
ゲコ:逆に毛糸が邪魔だって苦情もあったかもね。
うさ:そのあたりは難しいところだろうね。

ゲコ:あ、また橋が見えてきた。
うさ:今度は大橋だよ。右手に見えるのが西公園。
ゲコ:さすがにここにまで毛糸は結んでいないようだね。
うさ:いや、やはり結んであるよ…。
ゲコ:ホントだ。
うさ:あ、見て見て、あれ、仙台国際センターっていうんだけど、あそこの広くて立派な緑の庭にも。
ゲコ:本当だ。やっぱり毛糸だ。なんだか、ボクらいつの間にか毛糸さがししてない?
うさ:ホントだね。

ゲコ:これはまた。円筒状のコンクリートうちっぱなしの無機質な建物に、毛糸が何ともおめでたい感じだね。
うさ:よく生き物の進化とかで家系図みたいなのあるけど、この糸はそんな感じ。
ゲコ:中はどうなのかな。
うさ:さすがに中に毛糸はないと思うけど、入場料はオトナがたったの150円だよ。
ゲコ:じゃあ入ろう。
うさ:ボクらのご先祖さまの標本もあるかな。

バスは一路山道へ。青葉城址の前を通り、ぐんぐん緑深い青葉山へとのぼっていく。

ゲコ:緑豊かだね。
うさ:ホント。
ゲコ:次はどこで降りるの?
うさ:もうすぐだと思うよ。あ、ここここ。東北大学理学部自然史標本館前。

 

 

ゲコ:回廊って、僧侶が瞑想したところなんだよね。
うさ:ここもそんなイメージなのかな。空と毛糸しか見えなくて、とってもいい気分だね。

標本館見学後、ふたりはいいタイミングでやってきたるーぷるに再び乗車。

ゲコ:ホントにこの1日乗車券って、おトクだねぇ。
うさ:でしょ? 次は宮城県美術館前で降りるよ。
ゲコ:わ、なんだろ、あの白い柱は。
うさ:あれはイスラエルの作家ダニ・カラヴァンによる「マアヤン」だよ。
ゲコ:あそこに毛糸結んだらきれいだろうね。
うさ:さすがにそれはやってないみたいだね。
ゲコ:あ、でもあったあった。あの回廊の中庭みたいなところをご覧よ。
うさ:ホントだー。

ふたり、再びやって来たるーぷるに乗車。

ゲコ:今度は黄色いバスだ。
うさ:これで3種類全部乗ったことになるね。
ゲコ:あ、また橋だ。でもこれはここまでにわたった3つよりも相当でかいね。
うさ:仲ノ瀬橋だよ。さすがにここには毛糸は結ばなかったようだね。
ゲコ:わかんないよ。そのうちやるかも。
うさ:さあ、杜の都のけやき並木が見えてきたよ。
ゲコ:あ、あそこにも毛糸!

うさ:そしてここが伊藤豊雄の設計で名だたる「せんだいメディアテーク」さ。
ゲコ:ガラスとチューブでできてるんだ! で、見てよ、あのチューブの柱に。
うさ:毛糸だね。ガラス・ウォールだから外からも見える。
うさ:じゃ、そろそろこのへんで降りて、伝統的な仙台七夕も鑑賞しておこうか。次の定禅寺通市役所前で降りて、アーケードをたどれば、また仙台駅前に出るってすんぽうだよ。
ゲコ:うさのすけくん、すっごくダンドリいいね。今日はとっても楽しめたよ。
うさ:そう? そりゃあよかった。じゃ、今夜はゲコ山くんがどこか案内してくれる番だからね。
ゲコ:夜はまかしといて!

 

 

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