通い湯治10か月

2005年12月

GOTEN GOTEN 2006 アート湯治祭
宮城県東鳴子

 


師走。暮れも押し迫った12月21日。東鳴子へと向かう。仙台駅から東北本線で小牛田へ。ここで陸羽東線に乗り換え鳴子御殿湯駅へ。古川を過ぎたあたりから当たりが一面雪景色に。降り立った駅は駅らしくない不思議な建物で、何かがこの地で起こりつつあることをうかがわせた。

昨年04年から、長野の中学校で行われている「とがびプロジェクト」に参加している(展示はこれこれ)。出展者としてだけでなく、企画としてもかかわりはじめ、「アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)2006」に応募、参加企画として採用された。このとき、私の住む宮城県でもAAFに参加している企画「GOTEN GOTEN アート湯治祭」の存在を知り、さっそく横浜での展示の宣伝もかねて東鳴子ゆめ会議あてに作品ファイルを送った。即、大沼さんという方から連絡があり、できればすぐ来れないかという。横浜でのワークショップの冬期講習の合い間をねらって、東鳴子入りする。車の方が早いかと思ったが、鳴子御殿湯駅に降りてみたかった。家から3時間半ほどの道のりだった。

 

 

大沼さんは旅館大沼5代目湯守(ゆもり)。立教大で観光学について学んだのち、伊香保温泉で修行、故郷である東鳴子へ戻り、がくぜんとしたという。それから大沼さんのエネルギッシュな歩みがはじまった。

かつて伊達藩の御用湯があったことから、「御殿湯」と呼ばれるこの地。温泉神社のあるあったかつての御用湯は、明治43年の大洪水で流されてしまった。東鳴子ゆめ会議はこの御殿湯復活を目標のひとつにかかげている。しかしそれを支える理念は限り無くソフトである。
「どんなにどんなに立派な建物を造ろうとも、どんなに多くのお金を集めようとも、そこに住む人々がさまざまな垣根を乗り越えて、仲良くなっていかなければ意味がない」そうした思いをもってはじめられた活動は、旅館組合、商店街、町内会といったさまざまな組織ごとの垣根をはずし、町がひとつになって取り組む活動へと昇華されていった。

 

 

降り立った東鳴子は、温泉街というよりはどこか地方のふつうの町といった感じで、寒い中、道ゆく人もいない。メインストリートを北上していくと、だんだん旅館が現れ始め、温泉街らしくなってくる。ちょうど通りの最北端にあたる伊藤こけし店のたたずまいが印象的である。

 

「現代湯治入門 東鳴子温泉3日分モニターツアー」「田んぼ湯治」「光の盆」「雪まつり」「御殿湯駅コンサート」「縁台なる計画」「鳴子トライクめぐり」そして「GOTEN GOTEN アート湯治祭」と、さまざまな試みが行われ、全旅連「人に優しい地域の宿づくり賞」を受賞。特に旅館大沼の「母里(もり)の湯」はJR東日本「トランヴェール」ほか観光雑誌に広く取り上げられ、耳目を集める地域になった。

そして来年2006年開催の「GOTEN GOTEN 2006 アート湯治祭」。AAFの参加企画に2年連続して選ばれ、9月の1週間で20以上のイベントを行った2005年に対し、5月から半年ほどをかけた通年型の企画へと発展し、特に7月に「アートin湯治(AIT)」と銘うって、AAFでもあっと驚くような企画をやりたいという。1週間ほどアーティストに湯治をしてもらい、その中で東鳴子としては町づくりのグランドデザインのヒントになり、湯治アーティストにとっては今後の制作のヒントになるようなもの。また、湯治アーティストを迎えるという意味で、期間中、町に虹が出るように、毛糸を展示してはどうかと(このとき、大沼さんがわざわざ横浜の私の展示を見に行っていたことを知る)。

 

 

朝11時過ぎに着いて、昼3時過ぎの電車で帰る。かなりあわただしいスケジュールだったものの、旅館大沼の8つのお風呂のうち5つに入った。その泉質には驚かされる。別に温泉通でも何でもないのだが、これまでときどき日帰り入浴などで通っていた「温泉」がスポーツクラブか何かのように思えるほどに、それはホンモノで、聞けば「源泉掛け流し」、つまりわかしなおしたり、循環させたりはいっさいしないのだという。

アートin湯治(AIT)」、そして私自身の展示プランを作成することを約束し、東鳴子を後にする。ちょうど小学生たちが電車で帰って来たところで、隣駅の小学校に通っているらしい。
曇っていた空も晴れ晴れとして、夕焼けが美しかった。仙台駅に着くと日はとっぷりと暮れていた。

1月へ


通い湯治10か月

関連リンク

毛糸のインスタレーション yarn works
GOTEN GOTEN アート湯治祭
home
なるこファンルーム
 
源泉湯治へのいざない
 
東鳴子温泉観光協会
 
鳴子町観光協会
 
鳴子温泉郷ツーリズム
 
アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)
 
SATOKO