まちに虹をかけましょう 半分ちからをかしてください

取手アートプロジェクト2004へのプロポーザル

2004/7/29作成

これはとある雑誌で見かけて応募してみようと思った「取手アートプロジェクト2004」へのプロボーザルです。審査は8月下旬に行われ、結果は全然ダメでした。

これと同様の企画をわが街(地域)で、という場合にはどうぞご連絡ください。

 


テーマ:「1/2のゆるやかさ」

 「1/2のゆるやかさ」は、街にかかる虹をながめるゆとりと街に虹をかける心のゆたかさ。
    そしてそれを手に入れるために、ちからを半分出し合うこと。
        ゆるやかに孤をえがいて空にかかる毛糸の虹は、そんな思いのかたちです。

 

〔最初の1/2〕 虹をつくり、虹を育てる(11/13土〜20土)

@街に毛糸の虹をかける。
取手のみなさんにご協力いただき、街のさまざまな場所に毛糸の虹をかけます。
毛糸はふつうに市販されている安価な毛糸(毛糸といってもアクリル)で、基本的にこちらで用意します。
取手駅周辺、商店街、住宅街、市内を運行するタクシー、バス、渡し船…協力してもらえる人、場所をさがし、さまざまな場所に虹をかけます(「制作期間」はほとんどこの場所さがし、協力者さがしや各種の許認可申請などに費やされることでしょう)。
また、毛糸の虹付近には「虹をさがしてください」「虹をかけませんか」等と書かれた、本企画のアピールと参加を呼びかけるメッセージカードをはります。
虹を設置している期間は、その場所の管理者の方の判断や交渉の結果でかわります。ずっとかけているところもあるかもしれませんし、1日で片づけるところもあるかもしれません。
そうして1日以上、取手の街に設置された虹は、11/20までに回収、「後の1/2」の期間へとリ・サイクリングされます。

A七福神がまねく虹
取手を訪れた人も、虹をかけることができます。
街にはられたメッセージカードや案内所で参加方法を告知します。取手には「取手七福神」がいるので、これらの神様が祭られている場所にお願いし、七福神のかたわらにそれぞれ1色ずつ毛糸を置かせてもらいます。
これらを集めることで、虹の材料を手に入れることができます(必ずしも7色そろわなくてもよい)。それを@の協力していただける場所にかけさせてもらいます。

B各地から集められた虹
取手を訪れることのできない方も、虹かけに参加できます。
それぞれが自分の住む街の好きな場所に虹をかけ、それを11/20までに送ってもらいます。虹の写真も同封してもらえるとなおいいでしょう。ネットなどで参加を呼びかけていきます。

C虹への思い
こうして虹をかけたり、かけられた虹をさがしたりしているうちに生まれてきた虹への思いや、虹のもつイメージを、インタビューやアンケートを通して集めていきたいと思います。そうすることで、目にしているその虹への新たな視点が生まれるかもしれません。そしてそうした思いが、個人的なものであるのと同様、どのように文化的・社会的な影響を受けているのか発見するかもしれません。

※以上のうち、Aに関しては、実現が不可能な場合、実施せずとも、プランに大幅な変更はないと思われます。

 

〔後の1/2〕 虹の変容とリ・サイクリング(11/21日〜11/28日)

多くの人に協力してもらって生まれたいくつもの虹。これを今度は別の場所へ、別のものへとリ・サイクリングします。

@キリンビール取手工場に虹の橋をかける
キリンの庭の池に、毛糸の橋をかけます。虹は橋に変容し、リ・サイクリングされるわけです。多くの人のかけた虹が、池の上でひとつになり、水面にもそれがうつることでしょう。夕方からは、ほのかな灯りをぽつりぽつりと配置します(灯りは懐中電灯を紙コップに入れたもので、特殊な電源は必要ありません)。
「最初の1/2」の間、この場所には、「後の1/2」でかける虹を暗示するように、1本の、しかし短く複数の色をつなぎあわせた毛糸を結んでおきます。その毛糸は、8月上旬、東北三大まつりのひとつ「仙台七夕」のおりに、現代アート作品としてこの企画と同じように街に結ばれる予定の毛糸(ここでは「天の川」として)を使おうと思います(こちら)。そうすることで、さらに虹はふたつの街を結ぶ橋にもなるわけです。
また、取手で使われた毛糸は、今度は別の街を結ぶ毛糸として今後使われ、このリ・サイクリングの輪の中で、たくさんの街に虹の橋がかけられていく計画です。

Aサイクリングロードに虹の川を敷く
サイクリングロードに七色の毛糸の川をつくります。
ここでは毛糸は川へ変容します。サイクリングロードの道路上に、数キロにわたって置かれた毛糸の上をサイクリングする。それは虹の上で自転車をこぐことであるとともに、取手の人々がかけた虹の長さを体感することでもあります。
祝日11/23か最終日11/28をこれにあてたいと思います。

Bこどもといっしょに虹をリ・サイクリングする
学校や幼稚園などで、毛糸をはらせていただけるところをさがし、こどもとともに虹をかけます。
いつもの場所が、自分たちの手で、別のものに変容していくのを目の当たりにするかもしれません。
平日の1日(11/22)もしくは祝日11/23か最終日11/28。

C他展示への導線になる
他の作品までのみちしるべとして、毛糸をリ・サイクリングします。
駅から他の作品展示場所まで、何らかの導線になるように毛糸を設置します。

※以上のうち、@が実現されれば、プランの大筋は達成されます。のこりのA〜Cはできる範囲で実現できればいいでしょう。

 

〔展示がおわると…〕消えゆく虹(11/29〜)

虹は消えてゆくものです。それもあっという間に。そして今ごろはどこか別の街にかかっているかもしれません。しかし人々の心にかかった虹は、人と人をつなぐ橋として、ずっと長く残りつづけることでしょう。別のものへとかたちをかえ、リ・サイクリングされながら。

 

〔毛糸を結びはじめたきっかけ〕

茨城県出身で、オウム真理教により殺害された坂本弁護士一家の妻、都子(さとこ)さんが書いた短い詩があります。その死が明らかになった後、都子さんの友人らがその詩に曲をつけ、「SATOKO」という一枚のCDにしました(こちら)。曲をつけて音楽にできるなら、それに実際に従い、目に見えるかたちにして、視覚アートにできるのではないだろうかと思ったのが、この毛糸を結びはじめたきっかけです。

 

 

作品のコンセプト

「まちに虹をかけましょう 半分ちからをかしてください」

 人々が結ぶ毛糸の虹。それがやがてひとつになる。つまり、どれが自分のかけた虹か判別できないものの、確かにその中にそれは含まれている。そして判別不能ではありながらも、しかしなお溶け合うことなく、七色の独立した毛糸としてその中に存在する――そうした事態を私は提示したいと思う。
  おそらく一見して、この企画は、街の人の心をつなごうとか、人と人との結びつきを大切にしようといった博愛精神に満ち溢れた、あるいは道徳心に訴えるような、たとえば「ナイーブ」と言われるような企画だと思われることだろう。確かにある意味ナイーブではある。しかし、それは人の心を結ぶことなどできるはずもなければ、逆にそれは常に、既に、結ばれているのではないかという認識、人と人との関係性というものは、それ自体善でも悪でもなく、ただ単にそのようにあるのであり、そうした意味でそれは単に人間の慣習とか性質、人間という自然の一部に過ぎないのではないのかという認識、そうした意味での「ナイーブさ」においてそうなのであり、それがこの作品における私の出発点である。
  こうしたことを作品化してみようというきっかけを与えてくれたのは、人の心を毛糸を結ぶように結びたいという、茨城県出身で、オウム真理教により殺害された坂本弁護士一家の妻・都子さんが遺した一編の詩と、知人たちがそれに曲をつけてできあがったという一枚のCDである(こちら)。
  私はそのことを知り、長くそのままにしていたのだが、ある日それを「形式的に」行ってみよう、「ただ単に」その指示に従ってみようと思った。少なくとも私はそれを単なるいい話、道徳的な話とか教訓的な話として美化したり、崇拝したりはしたくないと思った。それがこの悲惨な事件をはじめとする「世界」という関係性の総体に対する私の見方であり、この作品の出発点、コンセプトである。


 

つなぐこと 結ぶこと
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関連リンク

取手アートプロジェクト2004

SATOKO