つなぐこと
結ぶこと

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2003/10/26-2004/11/16
長谷倉川(仙台市青葉区実沢)

2003/10/26
夏にはほたるも見られるこの川に、毛糸を結ぼうと思った。ときおり足が川に落ちて、くつの中をずぶ濡れにしながら、数十メートルの毛糸をわたす。連れてきた猫(ごる)が、草むらに隠れてずっと鳴いている。

 

 

 

 

 

 

まだ少し紅葉には早いので、もう少したってからやってもよかったなとながめながら、ふとしばらくこのままにしておこうと考える。紅葉であたりが美しくなるまで。
 たとえば冬の日、雪が深く降り積もる晩などに、私はよくスケッチに出かける山は、今頃どんなだろう、と思うことがある。それは「誰もそれを聞いていない山で倒れた木は、音を立てるか」といった問いと対称なすもので、私は山の様子や生きものたちの気分を想像してみる。そして山に置いてきた毛糸たちについても。それはとても不安な気持ちである一方、こどもの頃に抱いていた夜や山についてのどこかわくわくするような思いでもある。

 

 

 

10/28

雨。毛糸はまだそのままになっていて、ほんの中一日しかたっていないのに、紅葉がすすんだように見えるのは、雨でしっとりしているせいだろうか。すこしその風景の中にたたずんでみる。

 

 

 

 

10/31
妻と猫(ごる)を連れて様子を見に行く。それはまだそのままに、そこにある。

 

11/6
再び様子を見に行くと、川は落葉でいっぱいだ。

 

 

 

 

 

11/11
天気があまりよくなかったのだが、こういう日も私はとても好きだ。黄色い毛糸が川に浮かんで、落ち葉をせき止めていた。

12/22
午前中、毛糸を結んだ川に行く。ずっと見たいと思っていた雪の中の毛糸が見られる。とても美しい。先週来たとき、毛糸が途中で切られていたので、もう片付けようかと思ったのだが、残しておいてよかった。春になるまで、このままにしておこう。

 

 

2004/3/28
個展が終わり、ちょっとひと息。毛糸を見に行く。ちょうど半年くらい前にここに結んだ毛糸は、ところどころで切れていき、この風景の中にしみわたっていく。
5/26
先月、新緑の季節にも来たのだが、今日はもっと緑の色も濃く、すこし前に降った雨で、川の水量も多めだ。
毛糸は半年以上の間、風雨にさらされ、とぎれとぎれになり、よりあわされていたのもほつれ、もうこの景色の中で、ほとんど違和感をもたない。

 

 

 

 

11/16
ひさしぶりに毛糸を見に行く。もうほとんど毛糸は流されてしまい、断片のようなものしか残っていない。ほぼ1年を経過したことだし、今日は残った毛糸を回収して帰る。ずいぶん長い一年だった。

 

 

 

 

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