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せんだい上映会へのメッセージ
川崎けい子監督

川崎監督から、せんだい上映会によせるメッセージが届きました。

 

 


「バンダミール――川崎監督の写真をもとに」©A.Kadowaki


 アフガニスタンのヤカオラン地方には、世界でも希有な美しい6つの湖をもつバンダミールがあります。これらの湖は、季節によって、光のあたり方によって、刻々とその色を変えていきます。2002年の10月に訪れたときには、水が澄んでいてよく磨かれた鏡のようでしたが、今年の8月は、深い青と珊瑚の緑が交じりあった色でした。そして、湖畔のレストランは、美しい湖を眺めながら食事をするアフガン人観光客でにぎわっていました。
  しかし、バンダミール周辺の村々では、山にも平地にも樹木がほとんど見られず、強風が砂埃を巻きあげ、農業用水路として掘られた溝には水が一滴もなく、地面は無惨にひび割れていました。車の走行を妨げるほどの水が湖から路上に流出し続けているバンダミールのすぐ近くの村で、そこに暮らす人びとは、飢えと渇きに苦しんでいるのです。
  数十キロの地域内にさえ存在するアンバランスと不公平。こうした不公平はアフガニスタンのみならず、世界の現状を象徴しているように思えます。不公平な貧富の格差が、争いの原因となり、憎しみを生み出していきます。みんなが安心して暮らせる持続可能な社会を築くうえで、不公平をいかに解消していくかは?避けて通ることのできない緊急の課題といえるでしょう。
  一国内であれ、世界の不公平であれ、それゆえに苦しんでいる人びとの声に耳を傾けることは、解決への第一歩だと思います。映画「ヤカオランの春」のアリ・アクバルさんとタジワールさんの語る言葉はそんな声です。小さな小さな声です。「ヤカオランの春」を見てくれた一人一人の心の中で、その声が生き続け、あるときは形を変え、またあるときは、少し大きな声となって、伝えられていったらいいなあと思います。仙台から世界へ、声に共感した人びとがゆるやかなネットワークを築き、網の目のように広がっていったなら、制作者の一人として無上の喜びです。

;川崎けい子

 

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